三重県の多気町(たきちょう)を中心として6つの町がスーパーシティ構想実現に向けて動いています。多気町にはシャープ三重工場(中小型向け液晶パネルでは国内最大)があり、これが経済の中心になっています。農業も盛んであり、柿の生産量は三重県内では1位であり、ミカン・モモも栽培されています。また、松阪牛の産地の一つでもあります。多気町を中心とした6つの町が滞在型商業リゾート施設「VISON(ヴィソン)」を中心としてスーパーシティ計画を検討しています。今回はそのスーパーシティ構想について解説していきます。
三重県多気町等 6町共同スーパーシティ構想
三重県の6つ町が共同でスーパーシティ実現に向けて動いています。6町は下記になります。
- 多気町
- 大台町
- 明和町
- 度会町
- 大紀町
- 紀北町
上記6町では、2021年4月29日に第1期目のオープンを迎える滞在型商業リゾート施設「VISON(ヴィソン)」を拠点に、これら地域に共通する課題解決のため広域に連携し、自治体と企業が一体となって、AI・ビックデータなどの最先端技術を活用し、地域医療、モビリティ、観光振興、エネルギー等地域の社会課題の解決を目指し、三重広域連携スーパーシティ構想の実現に向けて動いています。
VISON(ヴィソン)とは
VISON(ヴィソン)は高速自動車国道法改正の第1号で生まれたグリーンフィールドです。名前の由来は「美村」からきています。三重県の上記6町と地元大学の産学官の連携によって誕生する日本最大級の商業リゾート施設です。伊勢神宮まで車で約20分の場所に位置しています。東京ドーム24個となる約119haの広大な敷地には、ホテル、産直市場、温浴施設、有名料理人が手掛ける地域食材を活かした飲食店、オーガニック農園など全68店舗が出店する予定となっています。全国初の民間スマートインターチェンジ直結施設でもあります。
VISONの公式サイトはこちら
グルーンフィールドとは?については下記をご覧ください。
三重広域連携スーパーシティ構想の全体コンセプト
三重県の広域連携のスーパーシティ構想では、上記のVISONをグリーンフィールドのスーパーシティとして、先端技術の社会実装、複数のサービス横断でのデータ連携モデルを確立すること、並びに6町連携で地域課題の解決を進める予定です。主な地域課題としては下記があります。
地域課題
- 少子化 / 高齢化 / 人口減少
- 地域医療の減少 / 医療費の増加
- 林業等地域産業の衰退
- 公共交通廃線による交通空白地増加
スーパーシティ構想の全体戦略
三重広域連携スーパーシティ構想では、課題からゴールと重要指標の設定を行っており、これらを実現するための施策として8つの取り組みを行う予定です。
ゴールと重要指標
- 人口増加(魅力ある住みたくなるまちづくり)
- 人口転入数
- 出生率
- 年少人口割合
- 地域経済の成長(活力ある産業のまちづくり)
- 町内総生産額
- 税収
- 安全安心な環境(安心安全なまちづくり)
- 自治体国保負担額
- 観光入込客数
8つの取り組み分野
- 医療ヘルスケア
- 7万人のドクターネットワークと、パーソナルヘルスコード連動型の医療サービスが支える、未来の地域医療の実現を目指します。
- モビリティ・サービス
- あらゆるモビリティが自律走行可能となるデジタルインフラ「ダイナミックマップ」整備と、広域MaaS連携を目指します。
- 地域産業活性化
- 林業等の地域産業を活性化させるための、一次産業におけるデータ活用と規制改革施策を行います。
- 地域情報発信基盤
- 位置情報などメタデータを活用した、観光から防災までカバーする、地域情報発信プラットフォーム開発を行います。
- ゼロカーボンシティ
- 自然との共存と、RE100の地産地消による、ゼロカーボンシティの早期達成を目指します。
- デジタルインフラ・防災
- 環境情報や、インフラ情報など、6町の社会基盤データを共通化し、維持管理の簡易化と防災へのデータ活用を行います。
- デジタル地域経済圏
- 観光客や住民による、地域店舗の利用活性化のための、行政サービス連動型のデジタル地域通貨の発行を目指します。
- 多目的ツーリズム
- ヘルスケアや林業等の地域産業、また教育など、多目的なツーリズムプランによる交流人口の増加を目指します。
まとめ
三重県の6つの町が共同で申請しているスーパーシティ構想は、現在構築中で2021年中には全てが完成する予定のVISONを中心としたものになっています。この場所をグリーンフィールドのプロジェクト地として、その他は既存の地域を活かす形のブラウンフィールドとなる予定です。
6つの町共同という珍しいスーパーシティ構想案
2021年4月の内閣府のスーパーシティ構想への公募では最多の6つの町が共同で提出している珍しい提案になっています。
1つの自治体では難しいような構想も近隣の自治体を含めて構想を進めることで、より大きな規模でスーパーシティ実現が図れるというメリットがあると思います。一方で複数の自治体で進めるとなるとステークホルダーが増え、合意形成が難しくなるというデメリットもあると思います。ただし、日本全国にスーパーシティ構想を展開していくにはどこかのタイミングで必ず、複数の自治体共同での構想実現が行われることになると思われるため三重県の取り組みには大いに期待したいと思います。