法案

スーパーシティ法案の課題とデメリット。問題や危険と言われる点を解説

スーパーシティ法案は2020年5月27日に可決されました。スーパーシティを実現するにあたり、住民に多くのメリットがありますが、それと同時に課題やデメリットもあるため、現在多くのメディアやSNSで課題やデメリットについて議論がされています。この記事ではスーパーシティ法案の課題やデメリットについて解説していきます。本質を理解せずに課題やデメリットだけにフォーカルするのではなく、メリットも理解しつつ、国民全員がよりよい社会を日本で実現していくための情報をこの記事では提供してまいります。
そもそも「スーパーシティ構想とは?」という方は下記の記事を参照ください。

スマートシティ構想
スーパーシティ構想とは?を簡単に解説!2020年5月にスーパーシティに関する法案が可決され、2021年から具体的な取組みが始まろうとしているスーパーシティ構想について具体的に解説していきます。...

スーパーシティ法案の課題とデメリット

スーパーシティ法案とは、複数の分野に関わる様々な規制を緩和して、最先端技術(特に最先端のIT、AI等の技術)を使いつつより良い社会を作っていくための法案です。そして技術にだけ着目するのではなく、地域に住む住民を中心とした便利な街作りを進めるのがスーパーシティ法案の本来の目的になります。スーパーシティ法案の課題・デメリットとしては下記のようなことが上げられています。

  1. 監視社会になる恐れ
  2. 個人情報の取り扱い
  3. 民間企業が様々なデータを収集して自社の利益のために使う恐れ

スーパーシティ法案の課題/デメリット①:監視社会になる恐れ

監視社会

スーパーシティが実現されることにより、監視カメラが街中に導入され、かつAIによる顔認証や顔認識を搭載しているため、監視社会になるのではないか?という恐れがあります。例えば、アメリカのカリフォルニア州サンフランシスコ市では警察や行政が監視カメラで顔認証を行うことを禁止する条例が可決されており、アメリカにおいても住民が監視されることを懸念しているということが伺えます。

2019年5月のニューヨーク・タイムズの記事

San Francisco Bans Facial Recognition Technology

監視社会に「なるか」「ならないか」の議論のポイント

監視社会に「なる」「ならない」の判断は非常に難しいです。歴史や世界を見ると、監視社会になった国や時代があったこともあります。しかし、AIなどの最新のテクノロジーによって監視社会になったかはまだ事例がないのも事実です。

一つの意見ですが、監視社会になるかならないかは、監視データの使い方が左右すると考えています。良い使い方をされれば称賛され、悪い使い方をすれば非難されるのは当然です。

例えば、何らかの犯罪(殺人や事故、空き巣等)が発生した場合には、監視カメラの映像は非常に有益なデータになるため、多くの人が利用すべきであると答えると思います。一方で、普通に生活をしているだけであるのに、常に監視カメラで追跡をされるということに対しては多くの人が懸念を持つはずです。またこれらのデータが自分の知らないところで利用されていたら怖いと考えるでしょう。

現代の技術においてAIは強力なツールです。強力なツールは使わない手はありません。議論すべきはこのような技術で監視するかしないかというよりは、そのカメラのデータをどの様に使うか?というところを議論のポイントとすべきです。

このように監視カメラ1つをとってみても、そのデータの活用の仕方によって、メリットになったりデメリットになります。スーパーシティは住民と自治体、国が一緒になって作っていくものであるので、双方で納得感がある技術やデータの活用を考えていくべきであります。

surveillance-society
「スーパーシティ法案」で監視社会になるは間違い!!!スーパーシティによって自動運転技術やドローンなどの技術革新が進む一方で、データを自由に閲覧できたり、カメラなどのリアルタイム映像を分析することで人々の行動を政府や自治体が監視するのではないかという不安の声も聞きます。 筆者からすると、システムやAIサービスを開発したことない人が小説や映画のような世界を妄想しているようにしか聞こえません。...

スーパーシティ法案の課題/デメリット②:個人情報の取り扱い

スーパーシティ構想において重要なテーマが情報です。これまで日本において、自治体ごとバラバラに管理されてきました。また紙で管理するなど情報を有効に活用することができていませんでした。スーパーシティにおいては、管理されなかった情報やバラバラな情報を集約して管理する「データ連携基盤都市OS)」の構築を目指しています。

データ連携基盤(都市OS)を使い様々な情報を一箇所に集め、行政手続きの簡素化など便利な社会を構築していくことになります。

情報が鍵になるスーパーシティ構想において、情報を集めることに障害があっては困るため、スーパーシティ法案の中に「第五 国の機関等に対するデータの提供の求め」や「第六 地方公共団体に対するデータの提供の求め」という項目で、戦略特区内において、「国家戦略特別区域データ連携基盤整備事業」の事業者はデータの提供を求めることができるという内容を盛り込んでいます。簡単に言えば、国やその機関のデータなどにアクセスし、事業者がAIやデータ分析に使うことができるというものです。

supercity-bill
スーパーシティ法案2020年05月に成立!気になる内容は?「スーパーシティ法案」とは、2020年5月27日に国会で成立した「国家戦略特別区域法の一部を改正する法律案」の俗称を指します。 スーパーシティによって、自動運転やドローンといった様々な技術によって発展シていく未来があります。スーパーシティの根幹となるスーパーシティ法案について詳しく見ていきます。...

情報のアクセスが簡単になるため、多くの個人情報が漏洩したり、不正に取り扱いが行われるのではないかという懸念があります。

個人情報取り扱いの議論のポイント

個人情報の取り扱いの線引も難しい問題です。一番の論点は、「個人情報保護法」と「規制緩和」のどちらが優先されるのか。ということです。

住民や市民の個人情報提供は保護される権利が優先されるのかスーパーシティ構想のために自由に情報の利活用ができるという公益性が優先されるのかが非常に曖昧です。

線引は難しい、曖昧であるため、「個人情報の合意に提供」を前提としてサービスで進めるべきです。つまり、企業や自治体は、住民が進んで受けたくなるようなサービスを開発しなければ個人情報は提供しないという構図です。良いサービスを提供しなくてはいけないかつ、個人情報は同意している人だけに提供するということで、個人情報保護の守られます。

個人情報によって得られるサービス例

みなさんの中では、情報がなぜ大事なのか疑問に思う方もいると思います。情報によってどんなサービスが享受できるか事例を解説します。

例えば、診察時間の効率化やセカンドオピニオン等の活発化ができると思われます。

「住民の健康状態」や「各個人服用している薬」についての情報が取得でき、共通的に管理されたとします。共通的に管理された情報は、近くの病院だけではなく日本全国の病院で共有され最適な治療、最適な検査、最適な薬の情報が集まります。

医師や薬剤師は、一元管理され全国から集まる情報を元に診断することにより、日本全国の知識や情報を集約した対応ができるようになります。

現状では何らかの病気にかかり、複数の病院に行った場合はそれぞれの病院で同じような検査や診察が行われています。これは病院間での情報が共有されていないからであり、検査時間や検査代等が余計にかかり私たち国民にとって良くないことです。

また、現状その人が服用している薬についてはお薬手帳に記載されるため病院に行くたびにお薬手帳を持参しなければならないです。多くの人が急に病院に行く時にお薬手帳を忘れてしまったという経験をしているのではないでしょうか。

本来その人が服用している薬についての情報は一元管理され、どこの薬局からも参照できるようにしておくことが重要であると思います。そのようにすることで、飲み合わせの悪い薬を確実に避けることができたり、セカンドオピニオン等も活発になるのではないかと思います。

スーパーシティ法案の課題/デメリット③:民間企業が様々なデータを収集して自社の利益のために使う恐れ

上記に記載したように戦略特区内において、「国家戦略特別区域データ連携基盤整備事業」の事業者はデータの提供を求めることができるというのがスーパーシティ法案には含まれております。これにより民間企業が様々なデータを収集して自社の利益のために利用するのではないかという恐れがあります。個人情報はその個人が同意しない限り第三者に渡ることはないという「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」があるものの、行政機関の長が特定の条件がある場合に利用目的以外の目的のために保有個人情報を自ら利用し、又は提供することができるという、法律が2016年9月に可決されています。今回の「スーパーシティ法案」と「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」が組み合わさることにより、個人の情報が民間企業に渡り、不当に利用されるのではないかという課題があります。

もちろん、スーパーシティ法案は国民に不利益を与えるためのものではないため、個人の情報を国や自治体に関わる業者が不当に利用することを目的とすることはないように今後進んでいくはずですが、私たち国民も個人情報についてはどのように利用されて、どのように私たちにメリットがあるのかを見極めていく必要があります。

トロント

この問題は日本以外でも重要な問題になっており、例えばカナダのトロントでは世界的なIT企業グーグルの親会社アルファベットの子会社であるサイドウォーク・ラボがトロントでの計画を主導していました。しかし、トロントにおいてアメリカのIT企業がどのようにデータを集めて保護するのか、誰がそのデータを保有するのかを懸念する批判が大きくなっていました。サイドウォーク・ラボ社は2020年5月にトロントでの未来都市計画から撤退しています。

サイドウォーク・ラボ社の社長は「経済的に不安定な状態が過去に例のない規模で世界中で起きており、トロントの不動産市場も例外ではありません。このため計画の中核的な部分を犠牲にせずにプロジェクトの収益性を確保することが、非常に困難になっています」と述べていますが、収益性だけではなく、個人情報の取り扱いについて住民から反対などもあり、スムーズに進まなかったという事情もあったようです。

グーグルがトロントで夢見た「未来都市」の挫折が意味すること

まとめ

今回の記事ではスーパーシティ法案の課題やデメリットについてフォーカルしたので、この記事だけ見るとスーパーシティがマイナスイメージに捉えてしまう可能性がありますが、実際には最先端技術を用いつつ、私たち国民がより豊かで便利な社会で生活するための基盤を作り上げていくのがスーパーシティであり、メリットもたくさんあります。上記にあげた課題やデメリットについても捉え方次第でメリットにもなり得ることであるので、どのような技術でデータを使っていったら私たちにメリットがあるかを考えていくことが大切です。

スーパーシティ自体がこれから使っていくものであるので、私たち一人ひとりが関心を持ち、主体的に自分の住む自治体や国と一緒に作っていくことが重要です。

ABOUT ME
市川駿
ITコンサルタント&経営者。アイルランド🇮🇪の国立大学でコンピュータサイエンス&ビジネスを学び、ITコンサルタントとして様々な企業のビジネスをITを用いて加速させることを得意とする。エンジニアとしてバックエンド、フロントエンドの開発も行うことができる。
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