デジタルツインとは
デジタルツインとは、「物理空間の情報を仮想空間に再現する技術」のことを指します。
VR(バーチャルリアリティ)も仮想空間を作る技術ですが、異なるのは現実をリアルタイムで再現するという点がデジタルツインの特徴です。
関連ワード:「デジタル・トリプレット」
デジタル・トリプレットは製造業におけるIndustry4.0を超える概念として誕生しました。
デジタルツインに似た言葉に「デジタル・トリプレット」という言葉があります。デジタルツインが「現実」と「仮想」の2つに対して、デジタル・トリプレットは、「現実」、「仮想」、「知識・モデル」の3つで構成されます。
「知識・モデル」とはどういうことかというと、人が介在するということです。デジタルツインでは、仮想空間上でシミュレーションしたものを現実に反映するという世界なので、現実で発生した分析や判断、解釈も仮想空間でシミュレーションできるという概念です。これによって、熟練者が製造する過程での暗黙知をコンピュータで解析、可視化することができるため初心者でも熟練者と同じ動きが再現できることが期待されています。
デジタルツインの技術要素
デジタルツインは様々な先端技術によって成り立っています。現実世界を再現する3Dモデリング。3Dモデリングを可視化するVRやAR。可視化した仮想空間上に現実世界のデータを取得し、連携するIoT。取得したデータを解析し、現実世界へ最適なシミュレーションをするAI。
デジタルツインの用途
- 製造業における設備保全
- 災害予測
デジタルツインのメリット
予測可能
デジタルツインの一番のメリットといってもよいのが、「予測可能」となることです。予測ができないことはリスクです。例えば、皆さんがマイホームを建設するとき完成までイメージはわかりませんとなると不安になると思います。しかし、事前にイメージができ修正可能であれば安心できます。また、現実世界では起こりにくいけど起こってしまったら大変な災害などでは非常に有効です。
コスト削減
例えば、現実世界でビルを建てたり、広い空間を調査するのは時間もお金もかかります。デジタルツインであれば仮想空間上に再現するので、現実世界で何かするよりは安くなります。
効率化
デジタルの世界なので何度もシミュレーション可能となります。これまで現実の世界で何日もかかっていたとしも、デジタルの世界であれば数秒で終わらせることも可能です。
品質向上
デジタル世界では何度も試行錯誤が可能なので、細い調整などした場合でも再度シミュレーションをすることが容易です。事前にシミュレーションを増やせば増やすほど、現実世界に反映した際に品質高く反映できます。
安全
危険な作業を伴うような高所や被災地域など人間にとって一定危険な場所での調査などにおいて、デジタル世界で実施できるため安全に実施することができます。
デジタルツインのデメリット
簡単に使える技術ではない
まだまだ発展途上の技術であるため万民が手軽に使えるものではありません。実際、デジタルツインをできる組織は、国や自治体または大手ディベッロパーや大手通信インフラ会社などの大企業に限られます。技術提供という意味であればスタートアップもありますが、デジタルツインをビジネスに活用するという意味ではまだまだ敷居が高いです。
後述しますが、オープンソースのデジタルツインのライブラリも登場しているので手軽に扱えるようになる日は近いです。
コストが高い
メリットにコスト削減と書いているので矛盾するような気がしますが、メリットの部分はあくまでも現実世界で実施するまたは、手戻りが少ないという意味でのメリットです。
デジタルツインを導入するには、「モデリング」「センサー設置」「データ解析」「データマッピング」「AIでの解析」とそれぞれでもかなりお金がかかるラインナップをすべてやらないといけません。
デジタルツインの活用事例
国土交通省:PLATEAU by MLIT
PLATEAU(プラトー)は、2020年4月にスタートした3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化のリーディングプロジェクトです。3D都市モデルを整備し、オープンデータとして公開することで、誰もが自由に都市のデータを引き出し、活用できるようにすることを目的としています。
2021年4月次点で全国56都市のモデルデータが順次公開されています。
- 活用例
- ソーシャルディスタンシング判定
- 人流モニタリング
- 浸水シミュレーション
- 都市開発による歩行量予測
東京都デジタルツインプロジェクト
東京都がデジタルツインを実現しようとしています。その一端として、東京都全体の3Dマップや都営大江戸線の都庁前駅の3D点群データを公開しました。点群データは実際にダウンロードができ、専用ツールで閲覧することができます。
専用ツールは、CloudCompareがオススメです。CloudCompareをダウンロードして、東京都ページでダウンロードした3Dデータを読み込ませると表示することが可能です。
ワールドカップでの活用
ロシアで開催された2018年のFIFAワールドカップで、デジタルツインが活用されました。システムは、EPTS(ELECTRONIC PERFORMANCE & TRACKING SYSTEM)と呼称されています。サッカー選手のパフォーマンスや動きを追跡してリアルタイムにタブレット端末に反映するシステムです。大会では、ベンチにいる監督とスタンドにいる各国のアナリストに1台ずつ配布されました。
飛沫可視化システム
2020年、2021年猛威をふるっているコロナウィルスですが、飛沫を可視化する技術も多く登場しています。
株式会社エコ革では、建物内に浮遊する飛沫の経路を可視化し、屋内空間における感染症対策の課題を明確化するソリューションを提供しています。
物流シミュレーション
世界で物流システム売上高1位のダイフクでは、仮想空間上で物流システムを検証することができます。本来であれば、実際に稼働するまで数ヶ月かかります。
スーパーシティに構想におけるデジタルツイン事例
日本のスーパーシティ構想においてもいくつかの自治体がデジタルツインの活用を検討しています。
デジタルツインで地域の防犯や災害対策に活用する河内長野市
デジタルツインで整備計画を策定する加賀市
デジタルツインで公共施設の保全
スマートシティにおけるデジタルツイン事例
バーチャル・シンガポール(Virtual Singapore)
シンガポールで推進されているSmartNation(日本でいうスーパーシティ)ではシンガポールの都市計画にデジタルツインが使われています。
OSSのデジタルツインプラットフォーム
課題に手軽に扱えないと書きましたが、最近デジタルツイン構築プラットフォーム『Re:Earth』がオープンソースソフトウェアとして公開されました。OSSなので、ソースコードが公開されています。
3DDB Viewer
人工知能研究センター提供している3DDB Viewerは、世界のマップに3Dモデルを表示することができます。
https://gsrt.airc.aist.go.jp/3ddb_demo/tdv/index.html
情シスフォース