スーパーシティとは
スーパーシティとは、「AIやビックデータを活用し、社会のあり方を根本から変える未来都市」のことです。
内閣府の解説だと、「地域の「困った」を最新テクノロジーで世界に先駆けて解決する」とあります。日本でスーパーシティ構想を実現させ、その後は日本のスーパーシティを海外に輸出していく狙っていくのではないかとおもわれます。
歴史を遡ると2000年初頭から取り組みを始めています。これまではスマートシティと呼称していましたが、スーパーシティに変更しています。
これまでの自治体サービスと何が違うのか!?
- より住民の課題解決に焦点を当てている
- サービスを短い期間でアップデートされる可能性が高い
- 税金ですべて賄うわけではなく、一部ビジネス的な要素が含まれる
スーパーシティ構想の定義について
政府は下記のようにスーパーシティ構想を定義しています。
「スーパーシティ」構想とは、地域の「困った」を最先端のJ-Techが、世界に先駆けて解決する。「スーパーシティ」構想はこうした「まるごと未来都市」の実現を、地域と事業者と国が一体となって目指す取組みです。
内閣府国家戦略特区
※J-Techとは、世界に誇る”日本で展開される技術”Japan Technologyの略です。
簡単な言葉で言い直すと、「各地域の持つ社会的な課題を最先端のテクノロジーによって一挙に解決してより便利で快適な都市を作ろうという取組み」です。
スーパーシティ構想では、最先端の日本のテクノロジーを用いて、その地域の住民の暮らしをより便利に快適にすることを目指しています。地域の住民、事業者、国が一体となって未来都市を作っていくというのがこの構想のポイントになります。
現在ITを中心とするテクノロジーが急激に発展して、AIやビッグデータの活用がビジネスの分野で進んでいます。これらの技術を人々の暮らしにも有効に活用して、行政(役所の手続き等)を含め、社会全体をより便利にしていこうというのが目的になります。現在は、行政での手続きは煩雑で時間がかかり、移動の手間、人との接触が必要等、様々な問題があります。テクノロジーの進化によりこれらを解決できる土壌が育ってきたので、日本政府としてはこれらのテクノロジーを有効に活用して、世界に先駆けて未来都市を作っていこうとしています。
スーパーシティの構想背景
世界においてスーパーシティ構想が急速に進展している
スペインのバルセロナ、ドバイ、シンガポールなど様々な国で既存都市をテクノロジーを使って造り変えようとしています。
テクノロジーを用いて未来都市を作ろうという取組は世界の様々な都市でも検討や実現に向けての建設が進んでいます。内閣府では下記のような海外事例を紹介しています。これらの国や地域でも積極的にテクノロジーを用いた未来都市作りが行われていますが、どの都市も推進を行っている形であり、完成した都市という形にはなっていません。もちろんテクノロジーはどんどん進化していくため、今後も進化し続けることになりますが、一定の形での未来都市をどこの国が作り上げ、世界のモデルとなるかが注目です。日本政府は世界に先駆けて完成されたスーパーシティを作り上げあることに注力しています。
日本がスーパーシティのモデルとなりたい
世界において、スーパーシティの構想が進んでいるものの「完全なスーパーシティ」は実現されておらず、日本が先んじて、作り上げたいと政府は考えています。
直接的に記載はありませんが、世界にスーパーシティのモデルを輸出することができれば、日本の新たな産業にすることもできます。
スーパーシティの用語一覧
スーパーシティでは、多くの横文字が出てきます。意味を知っているのと知っていないのだと理解に大きな差が出ます。下記リンクでそれぞれの用語を解説しているので見てみてください。
スーパーシティ構想の目指すもの
政府が2019年にまとめた文書ではスーパーシティ構想が目指すのは下記であると定義しています。
「スーパーシティ」は、最先端技術を活用し、第四次産業革命後に、国民が住みたいと思う、より良い未来社会を包括的に先行実現するショーケースを目指す。
「スーパーシティ」構想の実現に向けて(最終報告)(PDF形式:847KB)
また、従来のスマートシティとの違いとして下記のように定義しています。
これまで日本国内において、スマートシティや近未来技術実証特区などの取組があった。しかし、エネルギー・交通などの個別分野での取組、個別の最先 端技術の実証などにとどまっていた。
「スーパーシティ」は、これらとは次元が異なり、「丸ごと未来都市を作る 」ことを目指す。すなわち、
「スーパーシティ」構想の実現に向けて(最終報告)(PDF形式:847KB)
1)エネルギー・交通などの個別分野にとどまらず、生活全般にまたがり
2)最先端技術の実証を一時的に行うのではなく、未来社会での生活を先行して現実にする。
3)その際、何より重要なことは、技術開発側・供給側の目線でなく、住民目線で理想の未来社会を追求することである。
スーパーシティ構想の候補地として政府から指定を受けると大胆な規制改革のもとで、自動運転や行政手続き、またはキャッシュレスなどの最先端技術が導入されることになる見込みです。従来のスマートシティでは、個別に規制改革が行われていましたが、スーパーシティ構想においては、複数の規制を同時一括で改革しようと決議規定が設けられています。スーパーシティ構想に指定を受けることで今まで規制により実現できなかったようなことが、一気に実現に向けて動き出すことができることになります。今まではテクノロジーの技術的には実現可能でも規制により実社会では利用できないこともありましたが、規制改革によりそれらのテクノロジーが利用可能になります。
ただし、スーパーシティ構想は技術中心で作られているのではなく、地域の住民に寄り添った形で作られていくのが特徴です。
2021年秋頃に5地域ほど選定
2021年4月26日の締め切りに対して、31の自治体が候補地として名乗りを上げています。元々、2021年夏頃、候補地の決定予定でしたが、遅延しており秋頃となる予定です。
2025年までに100地域
2021年6月18日に通称『骨太方針2021』においてスーパーシティ起点にスマートシティを2025年までに100地域に増やすと記載されています。今後どんどん増えていくことが予想されます。
政令指定都市及び中核市等を中心にスマートシティを強力に推進し、住民満足度の向上、グリーン化など多様で持続可能なスマートシティを2025 年度までに 100 地域構築する。このため、政府内の推進体制を強化し、ハード・ソフト両面での一体的な支援によりスマートシティの形成を進める。具体的には、スマートシティの整備を加速させるためスーパーシティを起点に、スマートシティ重点整備地域を選定し、都市間・分野間連携の基盤となる都市OSの早期整備によって、多核連携68の実現を後押しする。サービスの開発・運用の更なる促進を図るため、街区内の包括的な脱炭素化推進やゼロカーボンシティに向けた取組等のグリーン化との協調を図るとともに、MaaS等の実装段階にあるサービスの横展開を加速する。
出典:経済財政運営と改革の基本方針2021について
スーパーシティ構想の具体像
スーパーシティ構想では具体的にどのようなことが実現されるかというと、主に生活全般にまたがる下記の10の領域で大きく変わる見込みです。政府は10個の領域の内少なくとも5領域以上をカバーすることをスーパーシティの条件としています。例えば、スーパーシティが実現された地域ではエリア内での完全キャッシュレス(現金不要)の実現や、完全な自動運転、電気水道等をコミュニティの中で最適な形で管理するなどの施策が実施されます。
No | 領域 | 具体例 |
---|---|---|
1 | 移動 | 自動走行、データ活用による交通量管理・駐車管理、マルチモ ード輸送(MaaS) など |
2 | 物流 | 自動配送、ドローン配達 など |
3 | 支払い | キャッシュレス など |
4 | 行政 | パーソナルデータストア(PDS)、オープンデータプラットホームワンストップ窓口、API ガバメント、ワンスオンリーなど |
5 | 医療・介護 | AIホスピタル、データ活用、オンライン(遠隔)診療・医薬品配達 など |
6 | 教育 | AI活用、遠隔教育 など |
7 | エネルギー・水 | データ活用によるスマートシステム など |
8 | 環境・ゴミ | データ活用によるスマートシステム など |
9 | 防犯 | 緊急時の自立エネルギー供給、防災システム など |
10 | 防災・安全 | ロボット監視 など |
スーパーシティ構想先端サービス事例:移動・物流
- 自動運転車・自動運転バス
- 自動配送ロボット
- 自動パーキング
- 次世代モビリティ(電動キックボード等)
- ドローン配送
- 空飛ぶクルマの実現
- 移動サービスの一元的提供(MaaS)
- 住民等による地域公共交通サービス
- ロードプライシングによる渋滞緩和
- (路上乗り捨て型の)カーシェアリング
スーパーシティ構想先端サービス事例:医療・介護
- 遠隔医療
- 遠隔服薬指導
- ウェアラブル端末による常時健康管理
- IoT機器を活用した患者の遠隔見守り
- PHR(個人医療情報)による医療最適化
- AI活用等による医療サービス
- 医薬品のドローン配送
- 病院・タクシー等の予約・決済システムの連携
- ポイントによる医療費支払い
- 移動する「診療所」
スーパーシティ構想先端サービス事例:デジタル・ガバメント
- マイナンバー等活用
- インターネット投票の実施
- 仮想住民制度(e-Residency)
- 住民手続の完全オンライン化
- 地域情報通信網による通信費の低廉化
スーパーシティ構想先端サービス事例:エネルギー・環境
- 太陽光・小水力発電等によるゼロカーボン推進
- 地域マイクログリッドの構築・仮想発電所
- FCV等の水素エネルギーの利活用
- EVカーシェアリング
- 可搬式「廃棄物処理施設」
- ICTによる効率的なごみ収集
スーパーシティ構想先端サービス事例:防災
- 位置情報等による個別最適な避難誘導
- 精緻な災害予測・避難シミュレーション
- インフラ点検ロボット
- ドローンによる被災状況把握
- LPWAによる水位情報等のモニタリング
- 避難所・支援物資輸送の効率化
スーパーシティ構想先端サービス事例:教育・研究開発
- 遠隔授業
- デジタル人材の育成
- オンラインによるグローバル教育
- AI・データ等による教育の個別最適化
- 大学等の研究成果の社会実装
- 大学キャンパスの実証フィールドとしての活用
スーパーシティ構想先端サービス事例:支払い・その他
- 顔認証によるキャッシュレス決済
- デジタル地域通貨・ボランティアポイント
- 購買データの地域での活用
- スマート農業
- 5Gによる新サービス提供
スーパーシティ関係の法案
スーパーシティは、国家戦略特別区域法の一部を改正する法律案によって推進されます。詳しい内容は以下で解説しています。
法案成立による懸念やデメリット
法案は、いくつかの規制緩和によるテクノロジー化の推進を謳っていますが、それによって「危険だ」「ヤバい」という方もいます。
スーパーシティに取り組む企業や組織
スーパーシティは国が推進するだけあり、予算が大きくまた新しい技術を試すことができるため多くの事業者が名乗りをあげています。