世界では、AIやビックデータなどのテクノロジーを用いて、住民の暮らしをより便利にする「スマートシティ化」の動きが加速しつつあります。その最先端を行くのが中国です。本記事では中国のスマートシティ事例を紹介し、「具体的にどのようなまちづくりを行っているのか」のイメージを掴んでみて下さい。
スマートシティ先進国の中国
中国は世界一のスマートシティ先進国であると言えます。なぜなら、現在建設しているスマートシティの数が500にも達しており、その数は他国を圧倒しているからです。
地域 | スマートシティを建設している都市数 |
---|---|
中国 | 500 |
欧州 | 90 |
アメリカ | 40 |
インド | 30 |
日本・韓国 | 15 |
カナダ | 8 |
南アフリカ | 5 |
東南アフリカ | 4 |
オセアニア | 4 |
中国のスマートシティ事例① 深圳市×騰訊控股(テンセント)
2020年6月、ゲームやメッセンジャーアプリのWeChatを提供するテンセントは、GoogleやAmazon等のオフィスを手掛けるNBBJ社の設計による未来都市「NetCity」を建設することで合意しました。NetCityは200万平方メートルの広さで約8万人が生活できる規模の構想で、2027年に都市完成を目標にプロジェクトを進めています。
MaaS
この都市の特徴は「MaaS(Mobility as a Service)」であると言えます。NetCityのコンセプトの一つに「City for People, No Cars」を掲げており、自動車は極力走らせず、代わりに自動運転バス、小型自動運転ロボット、シェアバイクなどを提供するとしています。また、これらのサービスは全てWeChatで利用から決済まで完結するように設計されており、利便性がとても高いです。
中国のスマートシティ事例② 杭州市×阿里巴巴(アリババ)
2016年、杭州市はアリババ社が提供するスマートシティのAIプラットフォーム「ET城市大脳(シティブレイン)」導入し、話題を集めました。
ET City Brain はあらゆるリアルタイムの都市データを活用して都市のオペレーション上の欠陥を即座に修正し、都市の公共リソースを全体で最適化します。これにより、都市の行政モデル、サービモデル、産業開発に数えきれないほどのブレークスルーがもたらされます。
出典:Alibaba Cloud商品概要ページ
交通問題をAIで解決
杭州市はETシティブレインを活用することによって様々な都市の課題を解決しています。例えば交通渋滞の需要予測をAIで解析し、交通状況に応じ信号機の点滅を自動で切り替えたり、救急車等の緊急車両が通る際に、信号があわせて対応するといったものです。その結果、自動車走行速度が15%上昇したり、救急車が病院に早くたどり着けるなどの効果をもたらしています。
事例から見えてくる、スーパーシティ実現に必要なこと
スーパーシティ実現のためには、政府や地方自治体がテクノロジーに精通している企業と連携することが必要不可欠です。中国の事例を見ての通り、行政がテンセントやアリババなど巨大IT企業たちと協力体制を構築し、スーパーシティプロジェクトを推進しています。また、これらIT企業は自身のユーザーから膨大なデータ量を取得し、それをAIの精度を向上させたシステムに生かすことができます。その結果として、利便性をより向上させたスーパーシティを開発するサイクルが成り立っているのです。
一方で、民間企業と連携することの問題点も指摘されています。例えば、データを自社の利益に利用してしまう危険性があるといった内容です。この問題点は下記の記事で詳しく解説されているため、気になる方はご覧下さい。
スーパーシティの問題点は国会でも議論されています。日本共産党の大門実紀史議員は2020年5月22日の特別委委員会で、「杭州市のスーパーシティの事例は、監視社会を助長し、プライバシーを侵害する」と強く非難しています。民間企業と連携し、スーパーシティを建設することに否定的な意見を述べる議員は少なくありません。
まとめ
本記事では、中国の事例を紹介し、スマートシティ実現には行政と民間企業との連携が重要な鍵となることに言及しました。今後も中国のスマートシティ動向に注目していきたいです。日本では、スマートシティを国家的に推進するためにスーパーシティ法案を可決し、現在推進しています。
まだ、スーパーシティについて知らない方はこれから注目ワードなので、是非解説記事を読んでみてください。
情シスフォース