事例

宮崎県延岡市(のべおかし)のスーパーシティ構想を解説!

延岡市(のべおかし)は、東九州に位置し、九州山地を背にして日向灘に面した非常に自然豊かな場所です。九州では二番目に広い面積を有し、人口約12万。延岡市は旭化成の創業地であり、工場群があるいわゆる企業城下町でもあります。そんな延岡市のスーパーシティ構想について解説をしていきます。

延岡市のスーパーシティ構想

延岡市のスーパーシティ構想の名称は「我が国を救う!日本のお家芸・製造業のまち延岡市スーパーシティ構想」となっています。「市民一人ひとりが主役」の時代をつくるために、産官学民の強い連携によりスーパーシティ構想を推進するとしています。延岡市では各専門分野における日本のトップリーダーで構成されるアーキテクトチームも特徴的です。全国に先駆けて「延岡モデル」を構築して、日本全体の再生に寄与したいとしています。延岡市では「デジタル化によって『一人ひとりが主役』の時代をつくる」とし、意義を「市民生活の質の向上」「農業の強化や雇用の増加で所得向上」などとしている。例えば、産業では、限られたエリアや敷地など局所的に構築するローカル5G(第5世代移動通信システム)など先端技術を活用した工場内作業の検証など。防災では、市民一人ひとりの状況に合わせた避難支援などを取り組み案として挙げています。

デジタル化とは「一人ひとりが主役」の時代をつくることです。働 く場所も働き方も、学び方も暮らし方も、医療も福祉も「与えられる もの」から「自分で決められるもの」へと変わります」と市長であると読谷山洋司氏は述べています。

スーパーシティの全体コンセプトと概要

全体コンセプトとしては3つを上げています。

  1. 市民が幸せを実感できるまちづくり
  2. デジタルテクノロジー等の活用範囲の拡大
  3. 平常時からデータ収集・活用で非常時の備えに

延岡市のスーパーシティ構想では、主な規制緩和の領域から各分野(産業・教育・医療など)での平常時の対応と非常時の対応について下記のように整理しています。例えば、交通の面では公共交通最適化のため道路運送法などの規制緩和を求め、市民の行動データの収集・分析による公共交通網の最適化、公共交通の利便性向上、オンデマンドタクシー等により「安く移動でき地球環境にやさしいまち」を実現するとしています。また非常時の対策として大規模災害発生時のシュミレータ活用による避難情報案内をデジタル技術を用いて実現していく予定となっています。

『スーパーシティ構想』の実現に向けた延岡市の取組み

延岡市のスーパーシティ構想は「平常時にデータ蓄積行い非常時にも即座に利用できること」を目指しているところが特徴的です。平常時に溜めたデータを人工知能を活用してPDCAの好循環を作り、その結果を延岡アプリにて市民に届け、よりよい生活の助けにしていくとしています。

『スーパーシティ構想』の実現に向けた延岡市の取組み

延岡市のサービス概要

出典:延岡市スーパーシティ構想

延岡市がスーパーシティ構想に選ばれるべき理由

延岡市のスーパーシティ構想においてはなぜ延岡市がスーパーシティ候補地に選ばれるべきであるかを明確にしているところが他の立候補地とは大きく違うところであります。下記のように延岡市はスーパーシティ候補地に選ばれるべき理由をまとめています。

①世界トップ・オンリーワンの取組みにふさわしいまち

多くのオリンピックメダリストを輩出し、世界トップクラスの技術による世界一・日本一の製品、ユネスコエコパークに登録され国際的に高い行化を得ている山々、水質日本一の五ヶ瀬川など、多くの世界一・日本一が存在するためとしています。延岡市出身のオリンピックメダリストとしては松田 丈志氏がいます。

②様々な場面を想定した事業の組み立て、実証が可能

九州で2番めに広い市域であり、住宅地から工業地域、中山間地域、離島があり、製造場が盛んでありつつ、農林業、漁業が盛んであるというバランスが良いまちであり、「日本の縮図」であると言えるとしています。人口についても12万人となっており、総務省が定める標準的な市の人口である10万人にちかいとしています。また近隣に大都市が存在せず、比較的独立した環境であることも特徴的です。

③将来にわたり、抜群に優れた研究開発等の環境

かつては高速道路が通っておらず、陸の孤島と言われていましたが、近年高速交通網が整備され、利便性が高まっている延岡市。そして超一級の海・山・川を活かした自然豊かなワーケーション拠点が存在しており、駅前には市のデジタル改革・イノベーションの拠点となる再開発ビルが2021年の秋にオープン予定です。

④市内外の人を惹きつけ、次代を担う人材を育てる施設

延岡城・内藤記念博物館が2022年度にオープンするとともに、市民のSTEM教育(”Science, Technology, Engineering and Mathematics”の教育のことを指す)や創業者精神を学べる文化施設として、野口遵記念館が2022年中にオープンする予定となっています。

⑤全国的に誇れるデータの安全性

延岡市には活断層が1つも確認されていなく安全性が高い立地であることも特徴であり、高機能なデータセンターが存在しており、これはスーパーシティとして安全性・継続性を保証するものであるとしています。

延岡市スーパーシティに向けたロードマップ

延岡市ではスーパーシティ実現に向けて3つのステップを設定しています。

  1. 機能等の検討・設計フェーズ(2021年〜2022年)
  2. 構築(2023年〜2025年)
  3. 運用(2025年〜)
『スーパーシティ構想』の実現に向けた延岡市の取組み

延岡市のスーパーシティ推進体制

アーキテクト

スーパーシティ構想においては構想を推進・設計するアーキテクトをおくことが条件とされています。アーキテクトとは?については下記をご覧ください。

スーパーシティアーキテクトとは
【スーパーシティ用語解説】アーキテクトとは?スーパーシティの中核を担う人材「アーキテクト」について解説していきます。...

延岡市はリードアーキテクトとして市長である読谷山洋司氏を指名しており、キーアーキテクトとして須田礼仁氏を指名しております。その他にアーキテクトとして、各分野の専門家を複数任命していることが非常に特徴的です。

読谷山 洋司氏(延岡市市長)

昭和61年 東京大学経済学部卒業。
同年自治省(現在の総務省)入省。
平成17年4月 愛媛県総務部長就任。
平成20年7月 内閣府参事官及び内閣官房内閣参事官に就任。
(緊急経済対策、企業再生支援機構法案、地方分権推進等を担当。)
平成22年7月 岡山市副市長就任。
平成24年1月 岡山市副市長、総務省 退職
平成25年3月 株式会社アレーテライフイノベーション社長
平成27年4月 長崎県立大学経済学部教授
平成27年10月 株式会社アレーテライフイノベーション会長
平成30年2月6日 第27代延岡市長就任
出典:延岡市

須田 礼仁氏(東京大学大学院情報理工光学系研究科 科長、コンピュータ科学 教授)

2010年4月 – 現在東京大学 情報理工学系研究科 教授
2002年11月 – 2010年3月東京大学 情報理工学系研究科 助教授/准教授
2000年4月 – 2002年10月名古屋大学 工学研究科 助教授
1996年8月 – 2000年3月名古屋大学 工学研究科 講師
1993年4月 – 1997年7月東京大学 理学部 助手
出典:国立研究開発法人科学技術振興機構

アーキテクト

所属氏名
東京大学大学院情報学環 特任教授片田 敏孝
東京学芸大学 教育インキュベーションセンター 教授金子 嘉宏
宮崎大学 副学長明石 良
国立循環器病研究センター 予防医学・疫学情報部 部長西村 邦宏
前 国立環境研究所・地球環境センター 主席研究員山形 与志樹
株式会社リクルート フェロー大久保 幸夫
SBI生命保険株式会社 代表取締役社長小野 尚
陰山ラボ 代表陰山 英男
旭化成株式会社 常務執行役員 エグゼクティブフェロー久世 和資
旭化成陸上部 顧問宗 茂

推進体制図

延岡市のスーパーシティ構想の推進体制図は下記のようになっています。

『スーパーシティ構想』の実現に向けた延岡市の取組み

まとめ

宮崎県延岡市のスーパーシティ構想は市長の強力なリーダーシップと各領域に専門家を配置してアーキテクトとしているところが非常に印象的です。スーパーシティ構想の提出書類も非常に多くの時間をかけて作成されている印象を受けました。旭化成の企業城下町として成長してきている市でもあり、産官学民の強力が得られやすい特性もあるのではないかと思いますが、行政だけではなく、企業そして市民と一体となって、スーパーシティ構想の実現を進めていけるのではないかと思います。

ABOUT ME
市川駿
ITコンサルタント&経営者。アイルランド🇮🇪の国立大学でコンピュータサイエンス&ビジネスを学び、ITコンサルタントとして様々な企業のビジネスをITを用いて加速させることを得意とする。エンジニアとしてバックエンド、フロントエンドの開発も行うことができる。
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