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スーパーシティと個人ID!なぜ、マイナンバーではダメで自治体でIDを発行するのか!?

スーパーシティ個人ID

スーパーシティ構想では、いくつかの自治体において「個人ID」を持つことを検討しています。個人IDとは、●●市や〇〇町の住民に振られる個人を特定する番号(文字列が含むこともある)です。個人を特定するのであれば「マイナンバーがあるのにどうして?」という声も少なくありません。なぜ、「個人ID」を自治体で作るのか解説していきます。

自治体で発行する個人ID

個人IDは、様々な呼ばれ方をしていて、自治体ごとにも呼び名が異なります。住民ID、地域ID、仮想市民ID、電子市民IDといった名前で呼ばれることもあります。自治体の名前を入れて、前橋市では「まえばしID」といった呼ばれ方もします。

スーパーシティ構想で個人IDは何に使われるのか

群馬県前橋市では、「まえばしID」を発行しようとしています。発行する目的は、『「誰一人取り残さない」で「技術が人に寄り添う」「先端的」で「パーソナライズ」されたサービスの提供』です。具体的には、まえばしIDを使い、緊急医療時などに健康データや受診データを使い、パーソナライズつまり個人に最適化された治療を行うような未来を想定しています。

まえばしIDとは
出典:群馬県前橋市スーパーシティ構想

各自治体の個人IDの発行と意図

大阪府大阪市「デジタルID」

大阪府大阪市では夢洲という万博会場をスーパーシティ構想で開拓しますが、ここには住民がいません。そのため夢洲に訪れる際の買い物や、観光、仕事での出入りを特定するためにデジタルIDを発行します。

石川県加賀市「e-加賀市民」

石川県加賀市では、e-加賀市民といって、加賀に住んでいない人でも市民IDを発行できるように画策しています。日本人はもちろん、世界のどこにいても加賀市の市民IDを発行することができます。加賀市の市民IDを加賀市民以外にも発行するのは、加賀市に興味を持ってもらい、来訪することを目的としています。

マイナンバーではなく、別に個人IDを発行する理由

既存の個人を特定する仕組みでは、不十分と自治体は考えているため個人IDを発行します。既存の個人を特定する仕組みは大きく3つあります。①マイナンバー、②顔認証、③民間が提供するIDサービスです。

前橋市が3つの手法を比較していたので、そちらをスーパーシティメディアで改めて表にしました。

マイナンバー
カード
顔認証民間
IDサービス
安全性
利便性
法的安全性
出典:群馬県前橋市スーパーシティ構想

比較軸は安全性、利便性、法的安定性の3点です。

  1. 安全性:クラッキングやハッキング時にセキュリティが十分可
  2. 利便性:簡単に導入したり、使用できるか
  3. 法的安定性:公的な裏付けがあるのか

マイナンバーカードは、利便性が△以外は◯なので、かなり有用そうであることがわかります。しかし、マイナンバーカードの利便性が低いことが問題になっています。利便性の低さには、マイナンバーカードが基本4情報を持つことが原因です。基本4情報とは、氏名、性別、住所、生年月日といった個人情報の中でも最も重要な情報です。基本4情報を使って、パーソナライズなどを行うとなると医療や物流、行政など色々なサービスで使われることになるため、個人情報が事業者にばらまかれてしまいます。基本4情報を含まれる超個人情報だからこそ、逆に使えないのがマイナンバーなのです。

前橋市は、マイナンバーカードの利便性を×すればより、まえばしIDの発行に説得力をもたせる事ができたと思います。

前橋市のパブリックコメントから見る個人IDへの不安

前橋市のパブリックコメントを見ていたときに興味深いコメントを見つけました。

パブリックコメント

インドの「Aadhaar(アドハー)」制度は研究されたでしょうか。日本のマイナンバー制度と同じようなものですが、こちらは指紋や両目の虹彩など、生体情報の登録が必須となっているそうです。2010年の登録開始当初は希望する人のみということでしたが、実質的に登録しないと生活が困難という状況から、登録率は9割を超えたとのこと。なし崩し的に「まえばしIDがないと生活が困難になっていた」「実質的には登録義務化」ということにはなりませんか。

要約すると、「まえばしIDは希望者のみに発行すると言っているが、インドのアドハーのように発行しないと生活できないことから、結局まえばしIDを発行することは義務になるのではないか」ということです。

Adhaar(アドハー)制度とは

2009年に導入されたインドのマイナンバー制度のようなものです。日本でマイナンバーカードが本格導入されたのが2016年なので、かなり前から制度を運営してきたいわば先輩になります。特にインドの人口は13億人と言われているため、日本よりも管理する人数やデータが大きく異なります。

Adhaar(アドハー)はNECが生体認証の仕組みを整えているようです。指紋認証、顔認証、虹彩認証を組み合わせているIDシステムです。

Adhaar(アドハー)の導入率は、13億人にもいるにも関わらず9割を超えます。日本では、2021年現在で3割程度なので普及率が高いことがわかります。9割も導入しているのは利便性が高いためです。例えば、福祉や補助金を不正が多くありましたが、正しく必要な人に届けられるようになったり、口座開設のため個人特定が簡単になったりと利便性が高くなっています。現金での賃金支払がデジタル化されたことで不正が減り、労働者がしっかりと対価を受け取れるようになりました。

こういった面で、アドハーなしでは生活できなくなるほど浸透していると言えるでしょう。

まえばしIDはAdhaar(アドハー)と同じ道を辿るのか

個人的にはNoだと思います。まず、まえばしIDは、前橋市民しか使えないので気に食わなければ、他へ移動することができます。インドのように国全体で行っているのであれば、インド人はインドの仕組みに従う必要があります。

まえばしIDは、基本4情報が含まれません。なのでどこまでいってもまえばしIDは、個人に番号を振っただけになります。学校で、出席番号で呼ばれているようなものです。先生は、生徒の住所や生年月日を知らなくても授業を行えます。ただ、生徒が給食で何を食べ、どういった授業をどれだけ受けたのかはわかります。学校の外に出てしまえば、出席番号は何も役にたたなくなります。まえばしIDは、出席番号レベルのものです。

まとめ

スーパーシティ構想と個人情報は、まだまだ議論の余地が大きいところです。世界を見ても個人情報取り扱い二慎重になっています。これは日本だけではなく、世界でも考えていかなければならないことです。

個人的には、日本で導入する仕組みを拒否しても、数年、数十年たったら海外の個人IDの管理の仕組みが導入されるだけだと思います。結局は、日本で考えた個人IDを導入するか、デジタル後進国となって海外の仕組みに乗っかり、周回遅れになり、全て海外の仕組みに乗る未来をとるのかという議論なのかと思っています。

皆さんのお考えはどうでしょうか!?スーパーシティ構想のデメリットは下記の記事から参照できます。

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畠山大世
ITコンサルティングとして、基幹システム刷新のPMO、要件定義、設計に従事。システムをより深く知りたくなり、エンジニアに転向。機械学習エンジニアとして、レコメンド、スコア予測、データ分析などを経験。 その後、フリーランスとして独立し機械学習だけではなくアプリエンジニアとしてフロント、サーバ問わず開発。また、PdMやプリセールスなどビジネス面も担当。
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