兵庫県養父市は2014年5月に国家戦略特区の指定を受け、中山間農業の改革・振興をはじめとする規制緩和を活用した地方創生に取り組んでいます。その経験を生かし、中山間地域にこそ必要なデジタルの取組をさらに加速させ、デジタル活用によるあらゆるサービスの利便性の向上を目指して2021年のスーパーシティ候補地に立候補しています。広瀬 栄市長の強力なリーダーシップが特徴的な自治体です。
養父市のスーパーシティ構想とは
養父市は2014年に国家戦略特区の指定を受けて以来、農業改革を行ってきた街として非常に有名です。その内容は、農地取得を企業もできるようにしたというところです。一般的に農地所得の許可の権限は農業委員会が持っていますが、養父市では市長がその権限を持ち、農業生産法人への要件緩和を行いました。それにより13の企業が養父市での農業に参画し、90人以上の新たな雇用を生み出しました。
養父市が2014年に国家戦略特区に申請した一番大きな理由としては、人口減少と高齢化により、耕作放棄地がどんどん増えていっていたためです。これを解決するために特区として規制緩和を受け、様々な農業改革を進めてきています。
参考:「国家戦略特区」をフル活用し、中山間地の地方創生モデルを目指す
スーパーシティのコンセプト
養父市のスーパーシティコンセプトは「日本一豊かでサステイナブルな『スマートヴィレッジやぶ』構想」としています。
目指すべき未来像
養父市は中山間地域と言われる場所が多く、地理や気候のほか、少子化や高齢化といった社会的な面も含めた条件不利により、他の地域では当たり前に提供されている暮らしを支えるサービス、暮らしを豊かにするサービスなどを享受する機会が限定的なものになっています。これは日本全国で同じであります。日本には中山間地域が7割あり、同様の課題を持っている地方自治体が非常に多いです。そんな養父市は下記のように目指すべき未来像を定義しています。
養父市では国家戦略特区の指定を受け、規制緩和を活用した取組みを積極的に進め、農業のスマート化や医療分野のオンライン化、物流でのドローン活用など多くの企業と連携することで、先端技術を身近なものとして利用できるよう取り組んでいます。これらの経験を通じ「中山間地域にこそ先端技術の導入が急がれる」という想いのもと、「日本一豊かでサステイナブルな『スマートヴィレッジやぶ』」を基本理念として、暮らしや活動のあらゆる場面に先進技術を導入・実装し、近未来の中山間地域の豊かな暮らしを実現します。
スーパーシティ型国家戦略特別区域の指定に関する提案書を提出しました。
養父市スーパーシティ構想の概要
『スマートヴィレッジやぶ』構想における日本一豊かでサステイナブル(持続可能)な暮らしの実現を目指し、データ連携基盤の構築を中心に先端的サービスの実装に取り組みます。また、スーパーシティ構想の推進にあたっては「養父市スマートヴィレッジ推進会議(仮称)」を設置し、その他の先端的サービスについても段階的に推進していきます。スーパーシティ構想のもと、誰も取り残さず、市民各々の生活の質の向上と中山間地域における持続可能なまちづくりを目指し、温かみを忘れない先端技術の実証・導入に向けて取組を推進して行く計画です。
養父市が取り組む先端的サービス一覧
養父市がスーパーシティ構想の中で取り組むとしているサービスは主に下記になっています。
- マイナンバーウォッチを活用した先進的な行政・民間サービスのデジタルプラット フォームの構築
- デジタルPFIによる「市民総合アプリ」(バーチャル市役所、ICT活用による地域解決型サービス等)の構築と提供
- 地域経済を活性化させる地域通貨等の導入
- オンラインによる生活指導の導入
- オンラインによる医療の推進 等
養父市は以前からマイナンバーカードの交付を積極的に推進しています。その成果もあり、兵庫県内1位の発行数を誇ります。(申請件数13,718件、市民の59.06%が発行申請済み)。スーパーシティ構想では、その素地を生かしたサービスの構築を行い、日本一豊かでサステイナブルなスマートヴィレッジの実現を目指す計画です。
データ連携システムの概要
養父市のスーパーシティ提案書には、データ連携システムの概要が記されています。他の立候補地と比べても非常によく考えられており、現実的なデータ連携システムの設計を行っているのが特徴的です。今後スーパーシティ候補地に決済した後にシステムの詳細な設計に入っていくと思いますが、是非使いやすくシンプルなシステムの構築をして欲しいと思います。
養父市のスーパーシティ推進のアーキテクト
スーパーシティ構想を推進するにあたって、アーキテクトをおくことが義務付けられています。養父市では東京大学出身であり、東洋大学教授の神場 知成(かんば もとなり)氏がアーキテクトを務めています。
スーパーシティのアーキテクトについては下記をご覧ください。
神場 知成氏(東洋大学 情報連携学部 情報連携学科 教授)
1986~2016年 NEC にて中央研究所 主任研究員、研究マネージャー、イノベーションプロデューサー、ビッグローブ(株)新事業開発本部長、インキュベーションセンター長など(その間、1994~1995年 ジョージア工科大学 客員研究員)。2011~2016年 筑波大学客員教授。2017年4月より現職。
高度なコンピュータ処理を、自然なかたちで生活や仕事のなかに取り込むことで、新たな価値をつくりだすことを目指しています。ロボットや人工知能も加わった新たな社会の、コミュニケーション・システム・デザインを考えていきます。
出典:東洋大学
まとめ
養父市は広瀬 栄市長の強力なリーダーシップと推進力で様々な改革を進めており、スーパーシティ構想の生みの親である竹中平蔵氏も注目している自治体であると発言しています。今回のスーパーシティ提案書も非常に現実的なものとなっており、構想の概要もしっかりとまとまっているため、スーパーシティ候補地として選定される可能性が非常に大きいのではないかと思います。
竹中平蔵氏とスーパーシティ構想の関わりについては下記をご覧ください。
参考サイト
スーパーシティ型国家戦略特別区域の指定に関する提案書を提出しました。
スーパーシティ構想提案書
「国家戦略特区」をフル活用し、中山間地の地方創生モデルを目指す
情シスフォース