大阪市は、段階的にグリーンフィールド型でスーパーシティを実現しようと考えています。また、万博を控えているため、万博も有効活用し、スーパーシティの構造を現実的に、そして最終的に市全体、大阪府全体に広げていくとしています。そういった計画や内容について解説していきます。
大阪市のスーパーシティ構想とは?
大阪市のスーパーシティはうめきた2期地区から市・府へ展開していく
人口減少・超高齢社会という課題を解決するために住民の生活の質を上げ、都市を強化していく思いがあります。
①うめきた2期地区のテーマは「健康」
大阪駅のグランフロント大阪付近8haをスーパーシティとして実証実験をしていく。実証実験としては十分な広さだが都市としては小さいこの場所は、公園も含まれていることから「健康をテーマとして新たな都市公園」として開拓していくようです。
公園に限らないと思いますが、生活の一部でしかない公園を中心としているのは実験として成り立つのかは気になるところです。
Parkness Challengeとは
Parkness Challengeとは、うめきた2期におけるスーパーシティのテーマです。うめきた2期は、250万人/日に行き交う大阪駅の近くの場所です。東京でいうと秋葉原並の人通りの多さです。(※2019年に248万人の乗降客)
parknessという言葉はないので、造語だと思います。そのまま意味を受け取ると「公園状態」?ちょっといみがわかりません。公園のような安らぐ雰囲気を出したいのだと思います。
Parkness Challengeの4つの柱
- 健康のシェア
- 健康(未病)の維持・向上、行動変容のきっかけづくり
- 育てる体験
- コミュニティ形成、社会活動への参加促進
- 感性のシェア
- 五感を刺激する体験の共有
- つなぐ
- 都心立地を生かしたまるごとサポート
Parkness Challengeで取り組む5つのサービス
- ヒューマンデータの利活用に資するプラットフォームの提供
- パーソナルモビティのシェアサービス
- 先端技術を用いた公園内・建物内における施設管理、配送などのマネジメント高速化
- リアルとデジタルを融合した都市空間=Parknessを実現するためのDX推進【プレイスメイキング編B2C】
- リアルとデジタルの融合した都市空間=Parknessを実現するためのDX推進【屋外実証実験空間編B2B】
ヒューマンデータの利活用に資するプラットフォームの提供
まだ、具体的な構想は不明ですが、おそらくIoTデバイスから情報を取得し、検診するとポイントがたまるような仕組みを構築するだと思います。
市町村や医療保険者、事業者等との連携により、ICTを活用して、府民の自主的な健康増進と受診意欲を高めるインセンティブづくりを推進するとともに、府民一人ひとりの実態に沿った健康情報を収集できる基盤整備を図ります。
出典:大阪府 第3次大阪府健康増進計画 2018年3月
Apple Watch
IoTデバイズでもっとも有名なのはApple Watchです。Apple Watchでは、「心拍数」「心電図」「転倒」などを計測することが可能です。不整脈の検知や転倒で一定時間応答がない場合は、緊急連絡先にメッセージが送信されるなど、介護者の家族の方にも安心なデバイズです。
Fitbit
Apple Watch以外で有名どころだと、Fitbitがあります。Fitbitは体重計と連動するなど、健康に特化した点が優れています。
パーソナルモビティのシェアサービス
こちらも詳細は明らかになっておりませんが、自転車やセグウェイ、キックボードや自動車など様々なものがシェアされそうです。
Luup
東京の渋谷ではすでにヘルメットなしで路上で走れるようになった電動のキックボードです。
空飛ぶクルマ:SkyDrive
大阪府では、空飛ぶクルマにも興味を示しており、2025年の万博には実現させたいという思いもあります。
空飛ぶクルマです。これは万博に向けてぜひ実現したいと思っています。このラウンドテーブルを既に開始しまして、それに対しての実証実験をするための補助費用です。それから、プラスチックビジネス推進事業ということで、ブルー・オーシャン・ビジョンを掲げています。また万博での発信、そういったことも踏まえて、そういったバイオプラスチックビジネスについての支援です。
出典:令和3年(2021年)2月18日 知事記者会見内容(大阪府)
大阪万博もスーパーシティ構想の一部
2025年に大阪・関西万博を未来社会の実験場として利用していきます。チケットの電子化や自動運転、来場者の認証方法、AR、自動翻訳など様々なテクノロジーを用いて、事業を行っていきます。
万博は世界中からたくさんの観光客が訪れるため、実験としては非常に良いと思います。元々万博には、実験や先進技術の活用の要素が大きく含まれているので実用化に向けたことができるととても良いなと思います。
大阪万博開催地の夢洲(ゆめしま)もスーパーシティへ
万博の開催地でもある夢洲を都市としてまちづくりをしていく計画です。現在、住民はいないので全くのゼロから街が作れるのがとても強みだと思います。政治や過去のしがらみに縛られない構想が進められると発展につながると思います。
スーパーシティフォーラムの開催
大阪市はスーパーシティを市民、府民に啓蒙するために2021年02月08日にフォーラムを開催しています。
内容は、以下のようにアーキテクトの発表や内容の説明です。
- アーキテクトの発表
- スーパーシティ提案内容の発表
- 知事、市長、アーキテクトによる意見交換会
主に夢洲、万博、うめきた地区を軸にスーパーシティを進めていくという構想について語られています。
大阪府のスーパーシティ×教育事業を推進する大阪商工会議所
大阪府は大阪府・市の行政機関だけではなく、スーパーシティ事業を推進している組織があります。それが「大阪商工会議所」です。商工会議所とは営利を目的としない経済団体のことで、主な活動内容の一つに、行政への提言活動があります。大阪商工会議所は大阪府・市に対し、大阪におけるスーパーシティのあり方について6つの提言を行っています。
1 | 簡単に健康状態を計測し、無理なく継続できる方法で健康維持、疾病予防 |
2 | 最適な在宅・日常の疾病管理、安心な救急対応、利便性の高い医療 |
3 | 効率的で機能改善効果も期待できる介護 |
4 | 誰にとってもストレスフリーで、積極的な生活を支える交通 |
5 | 誰にとっても便利で、使いたくなる金融システム |
6 | オンライン教育による人材育成、実践教育で行政データを活用 |
~スーパーシティ「Wellness Centric Inclusive and Vibrant City」の構築を
めざす6つの提案と今後の進め方~
6つ目にスーパーシティ×教育への提言があります。この提言は具体的にどのようなものなのでしょうか。
それは、2022年4月に新設される大阪公立大学(仮称)に対して、AIやデータ活用により、社会課題の解決を実装できる人材を育成するための「新学部設立」です。
大阪商工会議所は本日付で、大阪府、大阪市、公立大学法人大阪などに対し、令和4年(2022年)4月に予定される大阪府市新大学の開学に際し、「未来社会デザイン情報工学部(仮称)」の創設を提言する。万博開催を控え、スーパーシティの実現をめざす大阪において、データサイエンス(AIを含む)、コンピュータサイエンスを使いこなし、社会課題解決や、新ビジネス創出に力を発揮し、Society5.0 の実現を担う人材の育成加速を目的としたもの。
引用元:未来社会デザイン情報工学部(仮称)創設に関する提言~大阪におけるウエルネス等情報工学の人材育成拠点整備について~
これは、行政がもつ様々な実データを活用・連携し、教育や研究を行うことで、スーパーシティの実現に寄与することを目的の一つとしています。教育機関が社会課題を解決できるAI人材育成に積極的に取り組くめば、都市に大きなインパクトを与えてくれそうです。
現実味を帯びる新学部設立
大阪商工会議所が前述で述べた提言を行政に行ったのが2019年7月。その後、2020年1月に大阪公立大学を運営する公立大学法人大阪は、大阪公立大学の構想の変更を発表しました。
変更内容は橙色でハイライトされており、スマートシティ(スーパーシティの先行事例)を推進する「情報学研究科」が創設される予定であると資料に記載されています。また、本大学の基本構想には4つの戦略領域の1つとして、スマートシティを掲げています。大阪府がテクノロジーを活用したスマートシティの実装で、住民QOLの向上を目指すため、スマートシティ領域に重点的に取り組んでいくそうです。
スーパーシティに関する大阪市の公募は?
公募はすでに終了しています。
「最先端の未来社会サービス」アイデアを募集していましたが、2021年の2月26日で終了しています。
提案数は229件ありました。医療が一番多く、防災が次いで多いのは大阪ならでは気がします。
提案内容 | 提案数 |
---|---|
医療 | 71 |
物流 | 42 |
支払い | 26 |
医療・介護 | 47 |
服薬 | 7 |
教育 | 7 |
エネルギー | 19 |
環境 | 19 |
防犯 | 25 |
防災 | 60 |
施設管理 | 46 |
施設利用 | 38 |
エンタメ・アート | 20 |
その他 | 49 |
大阪市のアーキテクトは誰?
アーキテクトとは、「地域課題の設定、事業計画の作成、先端的技術の活用など、スーパーシティ構想全体を企画する」者を指します。
西尾章治郎氏(国立大学法人大阪大学総長)
現在大阪大学総長を務めている方です。データ工学を専門とされており、大阪大学で助教授や文部科学省にもいらっしゃった方です。
下條真司氏(サイバーメディアセンター長・教授)
・国立大学法人大阪大学 サイバーメディアセンター長・教授
・大阪府市特別参与(スマートシティ関係)
上山信一氏(慶応義塾大学政策学部 教授)
現在、慶応義塾大学政策学部教授を務めている方です。運輸省、マッキンゼー(共同経営者)、米ジョージタウン大学研究教授等をされていたようです。専門は、企業や政府系、地域開発等をさています。
藤本壮介氏(建築家 2025年日本国際博覧会会場デザインプロデューサー)
建築家で、東京大学特任准教授を務めている方です。フランス・モンペリエ国際設計競技最優秀賞など、様々な賞を取られている方です。
https://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/ictsenryakushitsu/0000524692.html
アーキテクトをやられる方は、華華しい経歴の持ち主が多いですね。また、元々国の事業に携わられている方ということで納得感もあります。
ただ、DXやITといった部分は疎いのかなと思います。それは、ホームページがhttpのままで、https化されていない点です。そういった細かいところは気になります。色々なツッコミを受ける前に早めに修正されることを祈っております。
まとめ
大阪市は、日本の他の都市と比較してもビジョンが大きく、かつスーパーシティ化するエリアもグリーンフィールド型なので、世界の先進事例としても良い事例となりそうです。
情シスフォース