群馬県の前橋市は4月16日に政府にスーパーシティ構想の指定を受けるための申請を行いました。群馬県の県庁所在地であり、『水と緑と詩の街』と言われる前橋市のスーパーシティ構想がどのようなものであるかを解説していきます。
前橋市のスーパーシティ構想とは
前橋市の基本情報
前橋市は群馬県の県庁所在地です。前橋市は、人口10万人あたりの医師数が中核市(政令指定都市以外の規模や能力が比較的に大きい都市)48市中、2位と医療が十分に備わっている都市です。
- 人口:約33万人
- 面積:約312km²
- 特産品:焼きまんじゅう
前橋市のスーパーシティ構想テーマはスローシティ
SUPER CITY × SLOW CITY
前橋市のスーパーシティ構想において特徴的なのが、最先端技術を活用した「スーパーシティ」の実現を行うとともに、人々が自分らしく生き生きとした生活を送る「スローシティ」を目指していることです。スローシティとは、日々の暮らしにゆとりがあり、豊かな自然、歴史文化に触れ、食や文化を楽しみ自分らしく生き生きとした生活を送ることであると定義しています。スローシティ国際連盟には世界で236都市がスローシティの推進のために加入しており、日本では前橋市と気仙沼市だけが加入しています。スローシティとは、多様性や寛容性をベースにゆっくりとした暮らしで心身ともに健康的な生活を送ること目指す街作りのことです。前橋市は日本で推進の役割を担っています。
参考:前橋市は「スーパーシティ」構想に挑戦します
まえばしIDが鍵を握る
前橋市のスーパーシティ構想においてもう1つ特徴的なものが「まえばしID」と呼ばれているものの実現になります。これは、マイナンバーカードにスマホのSIMカードと顔認証を組み合わせて本人証明を行う住民IDです。これを基礎として、行政の保有データ(医療、世帯、教育など)と民間企業の保有データ(口座、交通、購買など)をつなぐことで、様々な先進サービスを生み出そうとしています。今まではたくさんの種類の身分証明書やポイントカードや会員カード等を持ち歩く必要がありましたが、これらを1つにしようという構想でもあります。
前橋市のスーパーシティ構想における先端的サービス
前橋市作成のPR動画
前橋市のスーパーシティ構想について前橋市がPR動画を作成しているので下記を是非ご覧ください。
4分程度で
- 前橋市のスーパーシティ構想の概要
- 各世代(若者、お年寄り、子ども等)のメリット
- まえばしIDのプライバシーとセキュリティ
について解説されています。
前橋市のスーパーシティ構想では上記のように「まえばしID」を基礎として検討しているため、医療分野での活用が非常に大きく期待されています。前橋市が連携事業者を公募したところ、ヘルスケア・医療分野で、30件の申請があり、分野別で一番多かったのが、この分野であったとのことでした。従来の健康保険証だけではなく、今までの健康状態や服用中の薬の情報等がオンラインで管理され医師がどこからでもアクセスできるようになれば、緊急時にも素早い対応ができると期待されています。
まえばしIDとは
前橋市では、住民にまえばしIDを割り振ります。前橋市では、マイナンバーは利便性がないと考え、技術による革新的なサービスを提供するためにまえばしIDを住⺠に付与します。
まえばしIDのような地域ごとのIDを割り振る理由については以下の記事で解説してます。
まえばし通信網
前橋市では、最新のITやテクノロジーを普及させていくためにネットワークの設備に力を入れます。特にデジタルデバイドなどの情報やITへの格差は、ネットワーク環境がなかったりすることで起きるためインフラ設備に力を入れるのは間違いなく良策です。
また、医療機関などは個人情報を扱いかつ、情報量が多く、リアルタイム性を求められるため、セキュリティに強いネットワークの構築も不可欠です。
前橋市スーパーシティ準備検討会とは
前橋市では今回のスーパーシティ構想の公募のために産官学の関係者で組織する「前橋市スーパーシティ準備検討会」を組織して、対面やオンラインでのミーティングを200回以上行ってきているようです。このことからも前橋市の本気度が伝わってきます。
参考:前橋市スーパーシティ構想に150社超が参集 その中身は?
前橋市スーパシティ準備検討会の目的
前橋市では、スーパーシティ構想に指定されることで大きな規制改革を受け、民間事業者による新たな取り組みや実証段階となっている既存事業の実装を実現して、前橋市の課題解決と市民のくらしを豊かにすることを目指しています。また新型コロナウィルスのような人々の生活様式を大きく変えるような出来事にも対応できる街作りを目指しています。そのような街作りのために、スーパーシティ構想に係る申請や具体的な事業検討のために産学官から構成される「前橋市スーパーシティ準備検討会」を立ち上げました。
準備検討会の内容
開催頻度
だいたい、1ヶ月ごとに実施されています。
- 第1回:2020年10月16日
- 第2回:2020年11月20日
- 第3回:2020年12月14日
- 第4回:2021年01月28日
- 第5回:書面
- 第6回:2021年03月22日
- 第7回:2021年04月08日
参加者
群馬県知事や群馬大学学長、前橋市のアーキテクト、群馬銀行などの民間企業も参加しています。これだけのメンツを1ヶ月に1回集めて会議をするのは大変ですね💦
議題
スーパーシティ全体像やパブリックコメントの精査を行っています。
前橋市のアーキテクトは誰?
アーキテクトとは、「地域課題の設定、事業計画の作成、先端的技術の活用など、スーパーシティ構想全体を企画する」人を指します。アーキテクトに関しての詳しい解説は下記をご覧ください。
前橋市のアーキテクトは6名います。
大森 昭生氏(共愛学園前橋国際大学 学長)
1996年に学校法人共愛学園に入職、共愛学園前橋国際大学国際社会学部長、副学長等を経て、2016年より学長。
文部科学省中央教育審議会専門委員等の他、群馬県青少年健全育成審議会会長等地域における各種公的委員を多数務め、各地での講演多数。
出典:共愛学園前橋国際大学
國領 二郎氏(慶應義塾大学)
1982年東京大学経済学部卒。日本電信電話公社入社。92年ハーバード・ビジネ ス・スクール経営学博士。93年慶應義塾大学大学院経営管理研究科助教授。 2000年同教授。2003年同大学環境情報学部教授などを経て、09年総合政策学 部長。2005年から2009年までSFC研究所長も務める。2013年より慶應義塾常任理 事に就任。 主な著書に「オープン・アーキテ クチャ戦略」(ダイヤモンド社、1999)、 「ソーシャルな資本主義」(日本経済新聞社、2013年)がある。
出典:慶應義塾研究者情報データベース
山本 龍氏(前橋市 市長)
昭和34年(1959年)7月4日 群馬県吾妻郡草津町の鮮魚店の次男として生まれ、光泉寺幼稚園~草津小学校~前橋市立第三中学校~前橋高校~早稲田大学商学部を卒業。
出典:山本龍講演会
曽我 孝之氏(前橋商工会議所 会頭)
田中 仁氏(株式会社ジンズホールディングス 社長)
日本の実業家。群馬県前橋市出身。株式会社ジンズホールディングス代表取締役社長、株式会社ジンズ代表取締役社長株式会社ジンズノーマ代表取締役社長、株式会社フィー ルグッド代表取締役社長、株式会社Think Lab代表取締役社長
オイシックス・ラ・大地株式会社社外取締役、バルミューダ株式会社社外取締役、前橋工科大学客員教授、SFC研究所上席所員。群馬県内の地域活性化活動を目的とする田中仁財団代表理事
出典:Wikipedia
福田 尚久氏(日本通信株式会社 社長)
東京大学 文学部卒業
アップルコンピュータ(株)(現 アップル)本社(米国) 副社長就任
前橋市のスーパーシティ構想の事務局にはコンサルティングファームである、デロイトトーマツコンサルティングが入っているようです。
参考:01_出欠名簿 (PDFファイル: 137.3KB)
参考サイト
情シスフォース